−目次− ■オーディオミックス雑記
  P1 ミキシングとは┃ステレオとモノラル┃パン(定位)
  P2 ボリューム┃EQ(イコライザ)トータルEQ
  P3 エフェクトのインサート・センド┃空間系エフェクト
  P4 ダイナミクス系エフェクト・コンプレッサー┃主な用途
  P5 仕上げや小ネタ
(工事中)
■愛用のソフトウェア音源
■愛用の機材

■フリー写真素材 【空と雲】

■ボリューム

各トラックのボリュームバランスの調整は、ミックスの一番の目的。
MIDIトラック側のボリュームは、図D-1のように初期値ままでOK。
ハードウェア音源の場合、ノイズ対策を考えてMIDIボリュームはMAXにしておくと良いです。

【足りないゲインは】

色々な音源を使う場合、音源や音色によっては十分なゲイン(入力レベル)を得られていないトラックがあったり、バラつきが激しい事があります。明らかにゲインの低いトラックは、音源側の出力を上げるか、ミキサーのトリム(入力レベル)を調節します。トリムはSONARだと図D-2のようにコンソールの各ストリップ上部に付いています。
あと、私はよくやるんですが、レベルを底上げするプラグイン(マキシマイザーやリミッターなど)を最初に挿す手もあり。SONARなら付属のBOOST11 PEAK LIMITER(図D-3)が手軽で、インプットゲインは初期値の6dBのままでほぼ大丈夫。

【参考】

まずは大まかに全体のバランスを調整します。最初からきめ細かく調整しても、エフェクトをかけたりEQで音をいじったりする事でバランスが崩れてきますので、その都度調節していく事になります。

フェーダーは初期位置の0dBからはなるべく上げないよう、つまり、高くしたい音を上げるのではなく、逆に周囲の音を下げる方向で調節します。下の図D-4のような感じでほどほどに。

図D-1 MIDI側のボリューム


図D-2 トリム


図D-3 BOOST11 PEAK LIMITER

図D-4 上げるより下げる方向へ


バランスの取り方は色々とありますが、私はベースを基準にしています。
例えば、ベースのレベルメーターが-12dB前後で振れるようにフェーダーを調整したら、そのベースが程よく聞こえるようになるまで他のパートのフェーダーを下げていき、自分で想像していたバランスに近づけていきます。もちろんミュートやソロ再生も駆使して。

ミックスの本などを参照すると、全部ミュートにしておいてドラム→ベース→その他の順番にミュートを解除しながら音を増やしつつバランスを取っていく、と書いているものが多いです。でもどのみち最後は全部混ざるので、私は最初から混ざった音を整えていくのが好きというだけで、自分に合ったスタイルでかまわないと思います。


【ピークオーバーに注意】

こうやってバランスを取りながら、コンソール(ミキサー)の右端にあるマスターストリップのレベルメーターに注意。図D-5のように頻繁にピークオーバーで超過値が表示されるようでは、音に歪みが出てきます。
ピークオーバーで音が歪んでしまう事を「クリッピング」と呼び、「クリップ」でも通じます。
各トラックのフェーダーを少しずつ下げてピークオーバーしないよう、なおかつ図D-6のように少し余裕のあるように調整しておくといいです。

そのまま書き出してしまうと音量の低い曲になってしまいますが、そこは仕上げで調整するところなので今はこのままでかまいません。

図D-5 ×

図D-6 ○

【ボリュームのオートメーション】

各パートのボリュームはずっと一定ではなく、オートメーションで変化させる場合も大いにあります。このトラックはサビで大きくするとか、部分的に細かく音量調整したり等。このようなパラメータのオートメーションにあたる機能は、SONARだとエンベロープといいます。
ボリュームのエンベロープはMIDIトラックとオーディオトラックのどちらにも挿入が可能。通常、ミックスではオーディオトラック側に挿入するものなのですが、私は主にソフト音源とハード音源のパートで使い分けています。
・ソフト音源→MIDIトラックへ

図D-7

最初は「MIDIトラックのボリュームは初期値のまま」、と書いてましたが、エンベロープを挿入する場合は、積極的にMIDI側のボリュームを変動させます。
MIDI側にエンベロープを作っておけば、後でMIDIファイルに書き出すのが楽になるというのもあります。
・ハード音源→オーディオトラックへ

図D-8

ハード音源からオーディオトラックへレコーディングした後の話になりますが、後からMIDIトラックをいじって録り直すのは手間なので、オーディオトラックにボリュームのエンベロープを挿入する事になります。
また、ボーカルや生演奏などをレコーディングしたトラックがある場合、それに対応するMIDIトラックは存在しないので、必然的にこっちになりますね。
ついでに、
MIDIトラックのボリュームを下げると、それに対応するオーディオトラックにインサートしたエフェクトの余韻を残す事ができます。
一方、オーディオトラックのボリュームを下げると余韻もスッパリ消せますので、曲の構成や演出によって使い分けると良いです。ちなみにセンドでエフェクトへ送っている場合は、オーディオトラックを下げても余韻が残ります。

【ハードウェア音源のノイズ】

ハード音源は、どんなにステキな配線やシールドを使ってもノイズが付きものです。
色々な楽器の音が出ている時はまずわかりませんが、ピアノソロなどで他のパートが休む場合、使っていないトラックから「サーッ」っとノイズが出てたらイヤですよね。MIDI側は無音でも、オーディオトラックは完全には無音にならないわけです。
気になる場合は、クリップを分割して無音部分をカットしてしまうといいです。さらにクリップの両端をフェードイン、フェードアウトさせておくと違和感は減ります。
ちなみに、ハード音源の中でもSD-20のようなバスパワーで駆動できるタイプはほとんどノイズがありません。

余談ですが、ギターのアンプを通して録ったトラックなど、無音部分をカットしてしまうと空気感が変わってしまうので、あえて残す方もいるようです。

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■EQ (イコライザ)

EQはコンポやカーステレオ等でよく見かけるので、作曲に興味の無い方でも馴染みの深い用語なはず。
基本的にはそれらと一緒で、掻い摘んで言うと特定の周波数を狙って音量調節をするための物で、まさに究極のボリューム調整。
余談ですがエフェクターとして見ると、フィルター系に分類されます。

今日のDTMでは音色ごとにEQで積極的に音質を調整する事が多くなっています。
ミックス本などでエンジニアさんの話を見てみると、倍音関係とか細かい事を色々書いてますが、私はそこまで調整していませんので、ここでは私が使っている範囲での話を書きます。
EQはDAW付属の物でもいいですし、フリーのプラグインとしても様々な物が公開されています。
プラグインによって出音に個性があったり、使い勝手も変わってきますので、色々と試してお好みの物を使いましょう。
私がよく使うのは、SONAR付属のLP-64イコライザ(図E-1)。

  
  図E-1 LP-64 EQUALIZER

【EQの基本】

左は低い音域、右へ行くほど高い音域。
基本となるのは、「いらない部分をカット(削る)」と、「美味しい部分をブースト(押し上げる)」の2つ。
慣れるまではブーストさせるよりもカットする方向で使った方がやりやすいと思います。必要に応じてトラック別にイコライジング。
EQを使う一番のメリットは音を加工できる他、後述の「マスキング」を改善できる点にあります。

【マスキングとは】

大抵、音源に用意されたプリセット音色はソロで聴いて丁度良いくらいに調整されています。なので楽器の多い曲だと音の周波数帯域が被って、ごちゃごちゃになって聞こえない音が出てきたりする現象、「マスキング」が発生します。前述のステレオとモノラルの切り分けやパン振りである程度防止する事が可能ですが、音色別にイコライジングする事によってさらに改善できます。マスキング防止のためのイコライジングには、後述の「スペクトラムアナライザー」を導入しておく事をおすすめします。

【スペアナを導入】

音の周波数分布を視認できる「スペクトラムアナライザー」は、イコライジングの補助として大活躍します。略してスペアナ。
イコライジングは最終的には耳が頼りなのですが、スペアナで音を視覚的に確認しながら行うのもけっこう大事。
波形が確認できればいいので高機能でなくてもかまいません。フリーのプラグインでも良い物がいっぱいあります。
マスターバス(バスの説明は後ほど)にひとつ挿しておけば、ソロ再生やミュートを使ってトラック別の波形を確認する事ができます。

  
  図E-2 Blue Cat'sのスペアナ、「FreqAnalyst

スペアナの用意ができたらマスキング対策を試してみましょう。曲を再生して全体を聴きながら、こんな風になっている箇所を探します。

 ・同時に鳴っている音が多く、音がごちゃごちゃになっている。
 ・聴かせたい音が他の音に押されて聞こえにくくなっている。

サビや盛り上げる部分などではこういう状況になりがちです。これらを解消するためにEQでスッキリとまとめていくわけですが、自分の耳とスペアナの波形を頼りにして、最初は手探りの作業をする事になります。色々と試行錯誤を繰り返すうちに、ある程度の目星を付ける事に慣れてくると思います。
ではスペアナを参考にして具体的にどうマスキング対策をするのか、極端な一例を。

【極端な一例】

ミックスしている曲の中にC4〜C5の間でバックで演奏しているアコースティックギターがあるとします。単独で聴くと高域のジャランジャランという音と、低中域のボロンボロンという音が混ざって、とても良い音色。
でもオケ全体を通して聴いてみると、バッキングのはずのギターが他の音に被さって前に出すぎてしまい、ボリュームを下げると逆にギターが聞こえにくくなって困ってしまったとしましょう。

スペアナでアコギの波形を確認してみると、図E-3のように低〜高までものすごく広い帯域を使っている事がわかります。
こういう時こそEQで削ってスッキリさせましょう。(他にも方法はありますが、話の都合でとりあえずEQで)

図E-3 カット前のアコギ

中域以下の音ほどマスキングの原因となりやすいので、図E-4のように中域近くまでごっそり贅沢に削ぎ落としてみます。

図E-5がイコライジング後のアコギの波形です。低中域がスカスカになって、単独で聴いてみるとボロンボロンという音の部分が無くなっているのでかなり痩せた音色に変わってしまいました。でもオケ全体に混ぜて聴くと、高域のジャランジャランの音でもギターをしっかり主張できてますし、低中域の音が無いおかげで他の音を邪魔せず、隅で演奏している感を得る事ができます。これは削りすぎですけど。

図E-4 EQで低中域をカット

図E-5 低中域カット後のアコギ

以上のようなノリで各トラックをイコライジングしていきます。もちろんどこまで削る、もしくは下げるのかは全体を聴きながら自分の耳を頼りに行う必要がありますし、他の音を調整するとまた感じが変わって来るので、一発で狙った音にするのは難しいと思います。
私は以下の考え方でイコライジングしています。

  1. 主メロの音はそのままにしたり良い部分をブースト
  2. バックの音ほど不要な帯域を下げる

【EQカーブの参考】

とりあえずあまり難しくは考えずに、私がよく使っている音色別のEQ例を簡単に紹介します。
音質調整目的のEQが多いですが、マスキング対策の要素は、、、ちょっぴり入っているかも。
ピアノ その1

ピアノでは定番のEQ。
ほとんどのピアノの音色は高域をブーストさせると綺麗に聞こえますし、オケに埋もれにくく、抜けの良い音となります。
ピアノ その2

ハンマーノイズをカットするためのEQ。ハンマーノイズはピアノを主張できる重要な要素なのですが、周囲の美味しい音が他音にマスキングされると、ハンマー音だけが打楽器化してノイズのように残ってしまう現象が起こります。高域の演奏でありがちです。いっその事、聞こえにくくなる部分ごとハンマーノイズも削ってしまえばオケに馴染みやすくなります。ローランドのピアノ音色だと、500Hz付近から下にハンマーノイズが集中してます。
ベース その1

LP-64の初期プリセットより。
ベースがいまいち弱い時に、低域をブーストさせます。
ベース その2

エレキギターのバッキングがある場合などは、ベースが低音に専念する事でギターの邪魔を避けます。なんとまあ大胆なカーブ。というか絶壁。
ベース その3

あまりベースに最適なEQカーブではありませんが、Trilogyを使うときに時々やってしまうEQ。
ベース萌えの私はエレキベースのデゲデゲ感が好きなので、高域をわざと強調。また、Trilogyの太い音が曲に合わない時に少々低域をカットする事もあります。
バスドラム

LP-64の初期プリセットより。
バスドラはかなり広い範囲を使うので、イコライジングで随分とキャラクターが変わってきます。中域を下げて低域を上げるのは、より低音寄りにするため。これだけだと音としてわかりにくくなってしまうけど、3400Hz付近をブーストする事で膜にヒットする音を強調して存在感をアピール。
スネアドラム

LP-64の初期プリセットより。
音色にもよりますが、スネアは高域を少しブーストさせると金属感が強調され、弾けるような気持ちいい音になります。

こうして書いておきながら、これが正解というやり方はありません。曲・音源・音色・パート数によってもやり方は色々とあると思います。
試行錯誤や工夫を繰り返して自分なりのミックスを身につける事が、作り手固有の味に繋がります。

また、EQは使いまくれば良いわけではありません。色々とやった挙げ句、やっぱり何もしない方が良かったという事もあります。
音源や音色選択の見直し、別の音域へヴォイシングを動かすだけでも十分対応できる事も多いです。私が例に挙げたような荒削りをしすぎると痩せた音になりますし、音色の良さも損なわれやすいので、最小限のイコライジングで終わるのが一番綺麗な形なのかもしれません。
もちろんそのためには、作曲の段階でしっかりしたプランを立てておく事が大事です。

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■トータルEQ

先程はトラック別にイコライジングする話でしたが、ミックスの最終段階で曲全体に施す「トータルEQ」または「マスターEQ」というものもあります。これはミックスよりマスタリングの段階に近い話になりますが、EQの続きという事でここで書いておきます。
その前にまず、バスの説明から。本当はもっと先に書くべきなんですが。

【バス・マスターバス】

複数のオーディオトラックにまとめてEQやエフェクトをかけたり、同系統の音色のトラックをまとめてボリューム調整したい場合などに使うのが「バス」です。ミキサー画面でバス用のストリップを追加し、そのバスにエフェクト等を挿入したら、必要なトラックをそちらに送るだけでまとめて処理する事ができる便利なものです。
一方、マスターバスというのは、それらが集まってオーディオI/Fへと出力されるマスターストリップの直前に挟む、最終バスの事です。接続イメージは図E-6のとおりです。

図E-6 バスへの接続例

【マスターバスへ挿すEQ】

つまりトータルEQ・マスターEQとは、このマスターバスへ施すEQの事。
一通りミックスを終えた後で、最後でサウンドの微調整をするわけです。
ただしあくまで「微調整」に止めておく事を忘れずに。この最後の段階で極端に音をいじってしまうと、せっかくこれまでやってきたバランスが大きく崩れてしまいます。ここで大きく音を変化させるよりは、各トラックのバランスを見直しましょう。
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